瀬戸内海が見える富士!?
瀬戸大橋を通って四国に入ると、おむすびの形をした、富士山のような三角形の山が目に入ります。讃岐富士です。この山を見ると、「四国に入った」と実感します。「讃岐富士」は愛称で、正式には飯野山といいます。
香川県のほぼ中央、丸亀市と坂出市にまたがり、富士山のように平野にそびえ立っているように見えます。標高は422メートルとそれほど高くはありませんが、孤峰のため、存在感があります。瀬戸内海に浮かぶ塩飽諸島の島々に渡ると、海を挟んでもその威容が見えます。ということは、この山からは、瀬戸内海の島々や讃岐の景色が一望できるはずです。期待をもちながら2021年1月中旬、登ってみました。
飯野山の登山ルートは複数あるようですが、今回は、公共交通を使って行きやすい経路ということで、飯野町登山口を選びました。
JR丸亀駅の北側に丸亀市のコミュニティバスの停留所があります。ここから丸亀東線に乗り、飯野山登山口で下りるのが便利です。(丸亀駅発 7:32、9:32、11:02、14:02、16:02、18:02、一律200円=2021年1月現在)。バスだと二十数分で着くようですが、あいにく、ちょうど時間のあうバスがなく、今回は、丸亀城跡のお堀沿いや土器川沿いを通り、歩いて登山口を目指すことにしました。
讃岐富士の姿を目印に歩いていけば、迷うことはありません。三角形の山の方を目指し、とぼとぼと歩くこと約1時間、登山口のバス停にたどり着きました。バス停からは所々にある案内表示に沿って車道をのぼっていきます。10分弱で「野外活動センター」という登山拠点に着きました。水洗トイレがあるので、登山前に用を済ませておきましょう。
ここからは本格的な山道です。といっても、登山者の数が多いためか、途中までは木の階段が整備されており、道も踏み固められています。
円錐状の山を、らせん階段をのぼるように少しずつ上がっていきます。日当たりがいいのでしょう。1月というのに緑濃い樹木があり、シダ類も茂っています。冬にも広葉樹が青々と茂っているのを目にすると、瀬戸内の気候の温暖さを実感します。
標高が上がるにつれて眺望が開けてきました。農閑期の土色と黄土色の田畑が広がるなか、ところどころに瓦屋根の住居のかたまりが点在しています。周囲を見渡すと、ぽこんとお椀で土を盛ったような山が連なっています。
まさに「讃岐の風景」です。
海側の斜面に出ると、瀬戸大橋が対岸の岡山・倉敷側までまるごと見渡せました。塩飽(しわく)諸島の島々が青く穏やかな海の上に浮かんでいます。
登山口から山頂までの道のりは約3㌔。途中で休まず登ると、登りはじめて40分前後でたどり着きます。険しい岩場もないため、途中休憩しながらでも、小一時間はあれば頂に立てるでしょう。週末のハイキングにはお手頃な山です。
頂上には「薬師堂」などがあり、手をあわせて無事山頂に来れたことに感謝しました。
ただ、山頂部は周囲が木々に覆われ、眺望はあまりよくありません。景色は登りながら、あるいは下りながら、道すがら楽しむのがいいようです。
讃岐富士ほどの「美形」ではありませんが、香川にはおむすびのような形をした山があちこちにあります。
丸亀市観光協会作成の讃岐富士のパンフレットに「おむすび型のひみつ」と題した説明がありましたので、引用します。
「今から1000万年前火山活動により花崗岩や火山灰の上に溶岩が流れ、やがて浸食し溶岩が頂上に取り残された山々がたくさんできた。頂上の溶岩が広く残されたテーブル型の山をメサ地形(屋島や五色台)。さらに浸食が進み小さく残されたおむすび型の山をビュート地形{円錐状孤峰}(飯野山)という。」
讃岐富士の頂上付近にも巨大な岩石群がありました。そういえば、瀬戸内海に浮かぶように見える、点々と連なる島々も火山活動のなごりといいます。
平野にぽこぽことそびえる、おにぎり山と瀬戸内の多島美。讃岐の美しい風景は、人類誕生前の太古の昔から存在しているのです。
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